加えて、都内のワンマンライブには2011年からほぼ欠かさず通っている筆者が、アルバムにおけるライブ定番曲も紹介する。
人間椅子の恐ろしくカッコ良い音楽に触れるきっかけになればと願ってやまない。

2019年12月11日に人間椅子のベスト盤が発売された。

新曲も収録された記念すべきベスト盤、早速紹介していきたい。
人間椅子名作選 三十周年記念ベスト盤に迫る
人間椅子名作選 三十周年記念ベスト盤の収録曲
DISC1
- 命売ります
- 陰獣
- 針の山
- なまはげ
- 芳一受難
- 人面瘡
- 羅生門
- 品川心中
- りんごの泪
- 雪女
- 賽の河原
- 異端者の悲しみ
- ダイナマイト
- どっとはらい
DISC2
- 愛のニルヴァーナ
*新曲 (作詞・作曲/和嶋慎治) - 悪夢の序章
*新曲 (作詞/和嶋慎治 作曲/鈴木研一) - 宇宙からの色
- 洗礼
- 相剋の家
- 地獄
- 深淵
- 死神の饗宴
- 黒猫
- 芋虫
- 無情のスキャット

名作選概観
収録曲数はDISC1の14曲とDISC2の11曲、計25曲。
その内容は30年に渡り積み上げてきた人間椅子の数多の楽曲のなかから選りすぐりの逸品揃いとなっている。
そしてアルバム初収録となる命売りますがDISC1の一曲めを飾り、DISC2にはかねてからのファンにもうれしいことに和嶋・鈴木両氏がそれぞれ作曲した新曲愛のニルヴァーナ、悪夢の序章が収録されているのだ。
ベストアルバムながら、最近人間椅子が気になりだした方、久しぶりに人間椅子を聴く方、さらに昔からのファンまで幅広く対応した構成がうれしい。
更には、MVの再生回数が全世界300万回を突破し、その名を轟かせた無情のスキャットが最後を飾っている。
海外を見据えた全曲英語詞付き!


こんな感じ! また昔の写真も掲載されている。
昨今のMVには曲名を英語メインにしたり、英語詞を掲載したりと海外を見据えたプロモーションを水面下で行う人間椅子である。

人間椅子の詞世界がどのように英語で再現されるのかをじっくり確認すべく、是非アルバムを手にとっていただきたい次第である。
人間椅子名作選 三十周年記念ベスト盤の各曲紹介
曲については、このブログにてすでにアルバム単位で紹介しているため、ごく簡単にそれぞれの収録曲に触れていきたい。

そんな感じである。
命売ります
ドラマ「人間失格」にてタイアップとなった最狂のヘドバン曲がここにきてアルバム初収録である。

ライブではかなりアガる曲の一つではなかろうか。筆者の中では針の山、地獄のヘビーライダーに次ぐ勢いを持った曲だと感じている。
メインリフの恐ろしく畳み掛けてくるビートには首を振らずにはおれない。
刹那的なサビは切々と聴くもののを刺し、バラババンバのブレイクで一呼吸。再び怒涛のメインリフへとなだれ込む。
タイアップとしてのクオリティ(ちょうどよいサイズに区切れたり)をもたせつつも圧倒的な存在感を持った孤高の曲であったが、ここにきてのアルバム収録は嬉しい限り。
制作当初からベストアルバム収録を予定していたそうである。
陰獣
まさかの二十周年ベスト盤からの再録。

余談だが筆者が初めて購入したアルバムがその人間椅子傑作選ニ十周年記念ベスト盤である。
インディーズ盤にも収録されている陰獣だが、チューニングや歌詞がベスト盤のバージョンとなっている。

ダウンチューニングなため、より重苦しい響きが特徴。
イントロのワウがこれまた良い。
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針の山
決して避けては通れない、人間椅子が作り出した至福の地獄、それが針の山である。

ライブ本編のラストはほぼこの曲だと思って間違いない。
バッジーの名曲ブレッドファンに和嶋氏の地獄の詞を乗せたカバー曲だが、人間椅子の最重要曲となっている。
これから人間椅子に触れる方には是非この地獄を通過して、そしてまた訪れていただきたいものである。
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なまはげ
再デビュー後(オズフェス出演後)の重要曲のひとつ。
青森の隣県・秋田県における、異世界からやって来たマレビトの歌である。
戦慄するおどろおどろしさで幕開け、サビまでその恐ろしさでもって聴くものをひきずりまわす。
さらに和嶋氏の津軽三味線を感じさせる独創的なギターソロは凄まじい。
アンコール時に演奏される機会が多い一曲である。
是非ライブで体感していただきたい。
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芳一受難
円熟の傑作だと筆者が思っている19枚目のアルバム、「怪談〜そして死とエロス〜」に収録されている一曲。
鈴木氏作曲である。
重苦しいイントロから突如鬼気迫るテンポのリフへと展開するスリリングな曲。
ライブではかなり盛り上がる。
和嶋氏のコーラスも心地よいのである。
お経パートは是非覚えておくと楽しいのでオススメ。
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人面瘡
初出はインディーズ盤「人間椅子」という最初期からの名曲。
木漏れ日の湖畔を感じさせる美しいアルペジオで始まるのだが、如何せん人面瘡の歌である。
イントロとは一転し、思いのほかいなたいムードの曲である。
そしてOzzfest JAPAN2013でも披露されている。

羅生門
「羅生門」収録のアルバム表題曲である。
メンバーが二人となった時期の名曲。
サポートは後にメンバーとなるマスヒロ氏である。
オリエンタルな趣に満ちた名曲。
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品川心中
MVにもなっているアルバムのリード曲にして必聴曲。
落語を題材にした曲であり、ギターソロだけでなく和嶋氏の落語パートもあり非常に人間椅子らしい新しさに富んだ展開である。
大正琴の音も使われていたりする。
ライブでも結構演奏される曲だが落語パートは流石に演奏しながらではなく、普通に(?)落語をする。
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りんごの泪
人間椅子を代表する一曲であろう。
鈴木氏が初めてしたためたというリフがもとになって作成された1曲。
もともと鈴木氏はその曲に「デーモン」という曲名をつけていたそうである。恐ろしい曲のリフだったが、和嶋氏の手により情緒豊かで哀愁の滲む曲に。
青森出身の彼らならではの曲となっている。
非常にキャッチーで、津軽弁の語りも味わい深い。
またこの曲は初めてPVが作られた人間椅子の曲でもある。
それについて詳しくは「おどろ曼荼羅」を鑑賞されたし。
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雪女
「怪談 〜そして死とエロス〜」収録の美しくも激しい名曲。
吹雪のようにつんざくリフと音程を大きく上下するメロディーが印象的。
ソロは非常に派手でカッコ良い!
ライブでも比較的よく聴ける。
ちなみに真夏のフェスでも聴けたことがある。

賽の河原
1stアルバムに収録されている。
鈴木氏もあるインタビューにて海外ツアーでは是非演奏したいと意気込んでいたほど、人間椅子ならではの一曲である。
恐山的な世界観の重苦しさがすばらしい。
ねっとりとしたリフがあとを引くおいしさである。
Bメロのギターにかかるワウによる漂う感じが心地よく、途中の転調にはグッと来る。

異端者の悲しみ
アルバム「異次元からの咆哮」の最後を飾る大曲。曲長は7分に及ぶ。
文句なくカッコ良いリフと詞の世界観でこのバラエティに飛んだアルバムを締めくくっていた。
この曲は異次元からの来訪者がこの世界に紛れ、そして惑う悲しみを歌っている。
ともすれば自意識と現実の間で足掻く我々そのものなのかもしれない。
ふと転調する際に、眩さを感じさせるフレーズにその惑える存在が救われるかと思えば、やはり悲しみは続くのである。
筆者などは総じてそのカッコ良さに唸りっぱなしである。
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ダイナマイト
幻のアルバム「踊る一寸法師」収録のスピード感が半端ないギャンブルシリーズの一曲。
ライブでも大定番・大盛り上がりである。
MV集発売にあたりダイナマイトのMVが発掘されたわけだが、比較的最近(2010年くらい)からのファンである筆者には鮮烈であった。鈴木氏の肉体的な変化が見て取れるだろう。
筋肉少女帯にもカバーされている楽曲である。
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どっとはらい
「真夏の夜の夢」収録。
これでお仕舞い、という意味のタイトル通り、ライブではダブルアンコールなど最終盤に演奏されることが多い。
リフといいサビといいカッコ良い。
シュールな詞や21世紀の精神異常者のごときトリッキーな間奏など聴きどころも多い。
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愛のニルヴァーナ*新曲 (作詞・作曲/和嶋慎治)
妖しげなギターフレーズと不穏に鳴り響くベースで幕開ける期待の新曲。
先行して公開されていたため聴き込んでいた人も多いだろう。
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小気味よいリフは大変心地よい。
サビなどはブオンブオンとまくしたてるようなフレーズがたまらない。
おどろおどろしい展開を束の間挟んでからの怒涛のソロへ突入する流れなどはやはりここにきても人間椅子の新曲なのだとしっくりとくる。
悪夢の序章*新曲 (作詞/和嶋慎治 作曲/鈴木研一)
これまた新曲。
作曲は鈴木氏である。
こうきたか!という驚きを少なからず感じたが、何度か聴いているうちに筆者は大変好きになっていた。
曲の構成は比較的シンプルで、しかし細部にこだわりを感じさせる。
チキチキと細かく鳴らされるハイハットが薄ら寒い悪夢への誘いを感じさせる。
これまたシンプルなサビは、しかし繰り返されることでなんとも不安な気持ちが揺さぶられる。
ちなみに新曲は2曲あわせて収録時間が合計11分までと決まっていたとのことで、和嶋氏の曲の傾向を鑑みた鈴木氏はシンプルな構成で3分台に抑えたそうである。

宇宙からの色
ベスト盤の新曲が次のベスト盤に収録されるというのがすごい。
それだけベスト盤の新曲にかける力が全く遜色ないことがわかるものである。
ということでこの宇宙からの色は二十五周年記念ベスト盤である現し世は夢からの収録となる。
筆者も大好きな一曲である。
和嶋氏の夏の夢や出来事から着想を得た曲であり、たまたま道端で耳についた現代音楽から膨らませたイントロがまずもって特異であり、不穏な響きの音である。
ラヴクラフトシリーズでもあるが、未知なる怪異の胎動を感じさせる仕上がりである。
メンバーを辟易とさせた過酷なMVの仕上がりも素晴らしい。

洗礼
ノブ氏加入後初のMVが撮影された曲である。
いなたく重いムードのリフがかっこよい。
同じリフでも後半少し音の構成を変えており粛々と洗礼が迫る様が感じられる。
相剋の家
かのOzzfest JAPAN 2013でも初っ端に演奏された名曲。
和嶋氏なりの寺山修司的世界観を出した、とかつて氏の連載していたコラムにて語られている。難解な歌詞が特徴。
なんとも儀式的な雰囲気のリフとコーラスもかなり妖しげで聴き入ってしまうものがある。
ラストに開放されたかのような美しい展開もあり、他のアルバムラスト曲同様聴き応えあり。
地獄
無限の住人収録。
ライブでも演奏頻度も高い名曲である。
タイトルがこれ以上なくストレートに地獄。
たいへん盛り上がる曲なので、最近人間椅子を聴き始めた方には是非聴き込んでいただきたい一曲でもある。
地獄を転げまわるようなリフが秀逸。
さらに時計を表すパートでは和嶋氏のスライドギターの妙技か冴え渡り、そこから鈴木氏も思わずヘドバンしてしまうソロへの展開は壮絶である。
深淵
和嶋氏が人生のどん底たる「暗黒期」を経て生み出した傑作。
自らの内へ内へと降りていくかのようなイントロのアルペジオは美しく、かと思えば一転して劈く稲妻の如きリフが炸裂する。
さらに内側を探索するような多彩な展開を経て、その先光を見出し、そしてまた試練の道へと戻っていくのである。
Ozzfest JAPAN2013でも披露されている。
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是非併せて和嶋氏の自伝「屈折くん」を読んで頂ければと思う。
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死神の饗宴
「見知らぬ世界」の一曲目を飾る鈴木氏によるヘヴィチューン。
とにかく重いリフがかっこよい。
そのリフに絡む鈴木氏の荒々しい歌声もこれまたかっこよいのである。
これまたOzzfest JAPAN2013で披露されている。
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黒猫
「無限の住人」のラスト曲。
ベスト盤の常連となっている名曲である。
不思議なリフはどこか警戒心を持ちつつ歩む猫のようであり、鳴き声のような音色も飛び出す。
和嶋氏の圧倒的な表現力を体感できる一曲となっている。

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芋虫
アルバム「怪人二十面相」収録。
人気ながらベスト盤には初収録となった鈴木曲。
なぜかライブでも滅多に演奏されない。

江戸川乱歩の芋虫を、「芋虫」視点で描いており、悲しくも美しい旋律がグッとくる。
ライブでは和嶋氏のブルージィなソロが延々と続くこともあるが、それもまた是非体感していただきたい。
ソロ終盤にはテルミンパートも。

蠢き墜ちてゆく芋虫を感じさせるリフがやはり寂しげである。
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無情のスキャット
このベストアルバムのラストを飾るのは「新青年」より、無情のスキャットである。
憂いを帯びたイントロ、一転して激しく刻まれるリフ、高まりゆく展開からのスキャット。
そして至高のソロ。
さらにそれらを経てから最高潮を迎えるラストの盛り上がりがもう最高なのである。
MVも是非今一度見るべきであろう。
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初回限定版を買ってきた 前回のベスト盤のおまけと並べてみる

意気込んでフラゲしてきた筆者である。
購入したお店は秋葉原のタワーレコードである。

初回限定盤ということで、手ぬぐい付きである。


初回特典


逆サイドはこんな感じ


中身。いきなりの鈴木氏!


広げるとこんな感じ。


ちなみに二十五周年ベストの初回特典の箱はこんな感じ。



逆サイドはこんな感じ。


タワレコではポスターがついてきた。


カレンダーになっている。


更に謎の記念レシートも発行された。うれしい。

合わせて読みたい記事
参考
【インタビュー】活動30年で絶頂を迎えるロックバンド「人間椅子」に、なぜ活動し続けられるかを尋ねたRocket News24
「帰ってきた人間椅子倶楽部」を企画するなど、人間椅子の活躍を影で支えるネットメディア「Rocket News24」から、メンバー3名に対するインタビューである。
3人にとって、バンド活動が人生における大きなものだという確固たる確信すら感じられるすばらしいインタビューである。
ついでにその企画をしているであろう記者の佐藤氏のコラムも併せて読むべし。
ヤングギターの表紙を飾った人間椅子をみて、若き日から応援してきた人間椅子に対して感慨深い思いにかられるのであった。
参考
【コラム】陰ながら応援していたバンドが有名雑誌の表紙を飾り、書店で平積みされていた日Rocket News24
おわりに
ということで人間椅子三十周年の記念ベスト盤について紹介させていただいた。
衰えることを全く知らない人間椅子の最高のベストアルバムである。
(肉体的な話で言えば鈴木氏が尿路結石になってしまったりはしたが…)

三十一年目の2020年には海外ツアーも決まっている人間椅子です。
今後のますますの活躍が楽しみでならない。
いやはや、それにしても人間椅子、最高のバンドである。


